最近、事務所の方に顔出してねぇな・・・。別に、誰にも出せとは言われちゃいねぇし、こっちの仕事だって大変だから、誰かに責められるわけじゃねぇが(それに、責める奴がいたとしても、あの化物ぐらいだろうし・・・)。ただ、事務所っつう場所自体に、ちょっとした思い出もあるし。俺自身がたまには戻りたいと思う。それに・・・・・・。



“コンコン”

「誰だ?」

「失礼します。お久しぶりです、吾代さん。です。」

「お、おぉ・・・。久しぶり。」



俺は、この声が聞きたかった・・・・・・つうと、キモイけど。そういうんじゃなくて。何つうか・・・、たまには様子を知っときたかったんだ。



「今日は、どうしたんだ?」

「吾代さんの所へ資料を取りに行くように、ってネウロさんに頼まれたんです。」



そう言って笑えるコイツは、探偵とは違う意味で、すごい奴だと思う。あの化物に用事を頼まれて、笑顔でいられるなんて・・・。
そもそもコイツは、俺や探偵と違って、自分であの事務所に来たらしい。何でも、探偵の昔の友達だったとか。だからと言って、あの化物とは何の関係もねぇんだから、アイツの言うことを聞く必要はねぇのに。・・・・・・いや、まぁ素直に聞かなきゃ大変な目に遭うから、そういう意味では、コイツのように笑顔で聞く方が賢いのかもしれねぇが。



「資料は、そこにまとめてある。それを持って行け。」

「はい、わかりました。ありがとうございます。・・・あの、吾代さん。何か、私にお手伝いできること、ありますか?」

「・・・お前。それ、さっさと持って帰らねぇと、アイツに何かされるぞ・・・。」

「アイツ・・・?あぁ、ネウロさんですか?大丈夫ですよ。ネウロさんって、意外と優しいんですから。だから、大丈夫です。それで、何か手伝えることありますか?」



アイツが優しい・・・。そんなこと、あるはずがねぇ・・・!!
って言いたいとこだけど・・・。そんな笑顔で言われちゃあ・・・俺も何も言えねぇよ・・・。



「・・・じゃあ、悪いが・・・そこの紙の山。同じ大きさ毎に分けといてくれるか?」

「はい、了解です!」



・・・ったく。だから、なんで、そんなに嬉しそうな顔すんだよ。こっちが照れるだろうが。・・・べ、別に、深い意味とか無いからな!!
って、俺は誰に弁解してんだよ・・・。その後、俺はなんとなく、仕事には集中できずに、時を過ごした。



「・・・・・・吾代さん。できました!」

「おぅ・・・悪ぃな。」

「いいえ。こちらこそ、お邪魔してすみません。それでは、失礼します。」

「別に邪魔じゃねぇよ。・・・それと、さっき、アイツのこと優しいって言ってたけど・・・。やっぱ、俺にはわかんねぇな。」



帰らすには少し早い気がして、俺は無理に話を続けた。



「そうですか?今日だって、ネウロさんが私に吾代さんの所へ行けって言ってくださったのは、私が久しぶりに吾代さんにお会いしたいなぁって思ってたのを見抜いてのことだと思うんです。だから、意外と優しいんですよ、ネウロさんって。・・・それでは、失礼しますね。」

「・・・・・・あの化物に言われなくても、ここに来ればいいんだぜ。」

「・・・本当ですか?!ありがとうございます!!吾代さんも、いつでもいらしてくださいね!」



そうだな・・・。あの事務所には、思い出があって、コイツも居る。それらは、何よりも俺がそこに居てもいいと言ってくれている気がする。俺の居場所・・・そんなもんを与えてくれる気がする。
だから・・・・・・。



・・・ありがとうな。」

「いえいえ。お手伝いぐらい、いつでもしますから。吾代さんも私のこと呼んでくださいね。それでは!」



・・・礼を言ったのは、そのことじゃねぇんだけど。まぁ、いいか。また、いつでも来いよ。













 

初書き吾代さん!これを書いたときは、アニメのツンデレっぷりを意識しました(笑)。でも、頼れる兄貴イメージも。・・・出来はどうあれ(苦笑)、私は書いてて楽しかったです!

('09/06/18)