と付き合うようになって、俺は毎日、ホント幸せだった。
相変わらず、勉強はするんだけど、好きな奴と勉強っていうより、彼女と勉強っていう方が、俺の心持ちも多少変わるし。
ま、どっちにしても嬉しいんだけどな!

・・・よ〜し!今日も、に言われたとこまで勉強を終わった。
何か、ご褒美にキスとかしてくれたらいいのになぁー、なんて。は恥ずかしがり屋だから、絶対にしてくんないけど。
でも、それでもいい。俺が終わったと言えば、喜んでくれるの笑顔が何より好きだから。
そうは思うけど、ちょっと頼んでみるぐらい、いいよな・・・?はどんな反応するかなー?


「終わったぜー・・・・・・。」


大声でそう言いかけたけど、の方を見ると、はスヤスヤと眠ってしまっていた。
・・・何だよ。俺が頑張って、勉強してんのに。俺だって、部活後で疲れてんだからな!
そう思ったけど、だってマネージャーの仕事で疲れてるはずだ。それに、この時間は俺の勉強のために付き合ってくれてるだけで、は家に帰ったら、自分のための勉強とかもしなくちゃならないはず。


「ん〜・・・。ま、もうちょっとだけ待っててやるか。」


の方を見ながら、俺はそう呟いた。
それに、の寝顔を見れるわけだし!・・・いや、本当。寝顔もカワイイなぁー。


「・・・・・・大、好き・・・。」


おいおい。夢でも俺のこと考えてくれてんのかー?本当、カワイイなぁ・・・。
こんな無防備な姿で、大好きとか言われたら、俺も結構ヤバイ。・・・起きたら、絶対さっきのご褒美を頼もっ。
なんて思ってたのに・・・。


「・・・です。」


ん??です、って?さっきとつなげると・・・「大好き」「です」。「大好きです」??!
おい、絶対同い年の俺じゃないじゃん!!誰だ?先輩か!!


「・・・・・・柳生先輩。」

ー!!!!!」

「わっ!!・・・ご、ごめん!寝てた・・・。ごめんね、赤也が頑張って勉強してるのに・・・。本当に、ごめんなさい・・・!!」


は最後には頭を下げて謝ったけど・・・。


「そこじゃなくて!!」

「え・・・?」

「今、何の夢見てた?!!」

「夢・・・・・・?」


そう言って、はしばらく考え込んだ。でも、なかなか思い出せないらしく、俺に聞いた。


「何か言ってた・・・?」

「柳生先輩とか言ってたけど・・・?」


俺のその答えを聞いたあと、または考え込んだ。だけど、今回はハッとしたから、何か思い出したらしい。そして、その後、顔を赤くしていた。
おい!!何があったんだー?!!


「あー・・・、柳生先輩・・・か。」

「どんな夢だ?!!」

「えー?どんな夢って・・・。大したことじゃないよ。」

「そんなわけないじゃん!!」

「何を根拠に?!」


だって、さっき「大好きです」って言ってたんだぞ!!それなのに、何も無いわけがないだろ!!しかも、は夢の内容を思い出したはずなのに、慌てて俺に隠そうとするし・・・。
これは浮気だ!!!


「もういい。俺、帰る。」

「えー?!ちょっと、赤也!!!」

「じゃあな。」

「赤也?!ちゃんと説明するってば・・・!!」


気分を損ねた俺は、荷物をさっさとまとめて、を放って、部室を出て、思いっきり強くドアを閉めた。

何だよ、柳生先輩が好きなら、そう言えばいいじゃん。
久しぶりに1人で歩く帰り道。俺はそんなことを考えて、ムシャクシャしていた。
しかも、よりによって柳生先輩だぜ?ぜっんぜん俺と違うタイプの人間じゃん!!

と言うか、柳生先輩も柳生先輩だ。あの人、紳士とか言われてんのに、何、人の彼女に手出してんだ!!
・・・って、まだ手を出したかは、わかってないんだった。
ただ、が柳生先輩のことが好きだと言っただけ。しかも、夢で。
でも、普段から、柳生先輩はの相談とかも聞いてそうだし。無くは無いと思う。
しかも、あの言い方からして、はかなり柳生先輩のことが好きそうだった。
だって、すっげぇ恥ずかしそうに、かつ嬉しそうに「大好きです」って言ってたし!!
あ〜、思い出しただけで・・・・・・カワイイ。いや、だって!マジでカワイかったから・・・。

そんなカワイイを思い出して、何か言いかけてたのに、無視したのは悪かったかな、ってちょっと反省した。
でも、あんな帰り方しておいて、今更戻るのも、なんか恥ずかしいし。
とりあえず、明日にしよう。
そう決めて俺は帰り、からの着信も、「ごめんなさい」ってメールも無視して寝た。

起きてから、やっぱり、全部無視したのは悪かったよなぁ・・・。と思いながら、俺はとぼとぼと朝練に向かった。


「遅いぞ、赤也!!」


そんな真田副部長の大きな声も、あまり耳に入らなかった。ただ、だけを探していると。
うわぁ・・・、マジかよ。柳生先輩と何か話してるし。
俺は、一気に謝る気が失せた。
すると、柳生先輩が俺に気付いて、に何かを言った。は、慌ててこっちを向いて、急いで俺の所へ走ってきた。


「赤也!ごめんね、昨日は・・・。追いかけようと思ったんだけど、鍵とか閉めてたら、追いつけなくて・・・。メールで説明しようとも思ったんだけど、やっぱり直接説明した方がいいと思って・・・。本当、昨日はごめんね・・・。」


必死に謝るを見て、少しはイライラがマシになった。
・・・だって、やっぱり俺は、が好きだから。好きだからこそ、昨日の夢のことも、今柳生先輩と話してたことにも腹が立ってるわけで。
俺は、が好きだから、誰にも渡したくないんだ。


「説明・・・?」

「うん。昨日の夢は・・・・・・。さっきみたいに、柳生先輩に赤也のことを相談してるって夢だったの。」

「でも、『大好きです』って言ってたけど?」

「えっ?!!それも聞かれてたんだ・・・。」


明らかに動揺し始めた。・・・何だよ。やっぱり、ちゃんと説明する気なんて無かったんじゃねぇか。


「別に言いたくないなら、それでいい。」

「違う、違う!えっと・・・。話すから・・・、お願い。」


俺はそんなに返事をするわけでもなく、ただの方を見て、話すのを待っていた。


「あのね・・・。


さっきもが言った通り、はいつものように柳生先輩に、俺のことを・・・つまり、恋愛相談をしていたらしい。・・・って言うか、やっぱり柳生先輩は相談に乗ってるのか。まぁ、今はそこには突っ込まないでやるけど。


「柳生先輩・・・。私、赤也と勉強をしてるんですけど・・・。もっと、赤也が楽しくできる方法とか無いですかね?」

「それは難しいですね・・・。あまり、勉強がお好きでないですから。」

「そうなんですよー。なので、何かできないかなぁ、と。」

さんが居てくれたら、それでいいと思いますけどね。」


夢の中の先輩だけど。いいこと言うよな。
・・・って言うか、の夢の中の先輩がいいこと言うってことは、やっぱりは、柳生先輩のことをいい人だと思ってるから、そうなるんじゃねぇの?!
と思ったけど、今はの話は中断せず、聞くことにした。


「そうだといいんですけどねー。」

「ふふ・・・。よほど、切原くんのお役に立ちたいようですね?」

「そりゃ、まぁ・・・。そうですよね。」

「好きなんですね。」

「・・・・・・・・・大、好き・・・です。」

「『大』が付きましたか。これは失礼しました。」

「からかわないでください・・・、柳生先輩。」


っていうところで、赤也に起こされたんだと思う。その・・・。夢だから、あやふやなところもあるけど。大まかには、こんな感じだったの。それで、最後の方が恥ずかしかったから、上手く説明できなくて・・・。だから、昨日はごめんね?」


なんだ・・・。やっぱり、あの「大好き」は俺のことだったのか。それなのに、俺は説明も聞かずに・・・。


「俺も話聞かなくて、ごめん。」


俺はペコリと頭を下げた。


「ううん!私が早く説明すれば良かったんだよ!」


そう言ってくれるは、本当に優しい。それに、夢で相談するほど、俺のことも考えてくれてる。しかも、夢の説明も恥ずかしくてできなかったなんて・・・。あぁ、マジでカワイイ。


「ごめん、・・・!俺も大好き!!」


俺はそう言いながら、に抱きついた。こんなことをしたら、または恥ずかしがるかな、なんて思っていたら。


「赤也!!早く準備を始めんか!!」


って言う、真田副部長の大きな大きな声が聞こえてきた。
副部長が恥ずかしがってるところは、別に見たくねぇっての。しかも、今回ばかりはすげぇ耳に入ってきて、うるせぇし・・・。


「じゃ、。今日の放課後も、よろしくな!」

「うん!」


から離れると、やっぱり、は顔が赤くなっていて、カワイイなぁと思いながら、朝練の準備を始めた。

そういえば。さっき、は夢の中で、勉強する俺のために、何かしたいって言ってくれてたなぁ・・・。よし。

そんな企みを思いついた俺は、部活後の勉強会で、早速お願いすることにした。
どうせ、昨日も、お願いする予定だったんだからな!


、終わったぜ!」

「お疲れ、赤也!」


やっぱり笑顔でそう言ってくれただけで、俺は充分満足なんだけど。


は、俺が楽しく勉強できないか、って考えてくれてんだよな?」

「うん、そうだね。・・・でも、いい考えが浮かばなくて。」

「じゃあ、俺の頼み、聞いてくれる?」

「うん!聞くよ!!何、何?」


はすげぇ目を輝かせて、聞いてくれた。・・・そこまで、俺のために何かしたいってことなのか?
そう考えると、マジでカワイイ・・・。絶対、あのお願いをしてやる。


「じゃあ、勉強を終えた俺に、ご褒美として・・・。」

「うん、うん!ご褒美として・・・??」

「キスして?」

「・・・・・・・・・・・・。」


さっきまでのワクワクした表情が急に固まったかと思うと、今度は見る見る顔を赤くしていく
本当、面白い反応!でも、今日はその反応だけじゃ許さないからな?


・・・?してくんないの?」

「そ、そんなの恥ずかしくて、できるわけないよ・・・!」

がご褒美として、そうしてくれたら、俺も楽しく勉強できるんだけどなぁー?」

「で、でも・・・。そんなこと・・・毎度、毎度できないよ・・・。」

「今日だけだったら、してくれんの?」

「・・・・・・今日だけでも、赤也は楽しく勉強できる?」

「そりゃ、ホントは毎回っていう方がいいけど。たまに、っていう方が余計に頑張れるかもな。」


それは本音。だって、毎回してたら、が慣れちゃうかもしんないし。俺としては、キスすることも重要だけど、恥ずかしがるが見たいっていうのも、あったりする。
いや、あるいは。恥ずかしがるっていうのは、俺にしか見せない表情なわけだから、それを独占したいからなのかもしれない。
まぁ、どっちにしろ・・・。


「で、今日はしてくれんの?」

「・・・・・・・・・。」

が俺のために、何かしてくれるって言ったからなぁー。」

「・・・・・・・・・・・・わかったよ・・・。」

「おぉ、やりぃ!」

「でも・・・!赤也からしてよ!私からするのは、恥ずかしいから・・・!」

「おっけ!」


いつかはからしてもらうとして。お楽しみは後々に置いといてやる。
とりあえず、今日はそれで勘弁しといてやるよ。


「じゃ、目つぶって。」


俺がそう言うと、は相変わらず恥ずかしそうに目を閉じた。
・・・・・・うわぁ・・・。無防備。昨日、寝てるときも、そうだったけど。でも、やっぱり、今は俺を待つための無防備さなわけで。この表情は、本当に俺しか見れねぇよな!
なんて観察すればするほど、カワイイから、ずっと見といてやろうかと思ったけど、それじゃ絶対怒られるから、やめておこう。・・・まぁ、怒ったときも好きだけど。

そんなことを考えてから、を待たさないよう、俺は軽くキスをしようとした。
・・・うん、悪い。それは実行しなかった。だって、やっぱり、カワイイから。襲いたくもなるじゃん!でも、襲うわけにはいかないから、ちょっと長めにキスをした。


「・・・・・・んんっ・・・。・・・赤也!」

「なに??」

「・・・・・・長かった・・・。」


は、相変わらず恥ずかしそうに俯いて、小声でそう言った。
・・・そういえば。の肩が妙に上下に動いている。・・・もしかして、よくありがちな・・・。


「息止めてた・・・とか?」

「だ、だって・・・!緊張したんだもん・・・。」


やっぱりか!!それは、長くして悪かったな・・・。
でも、なんではこんなカワイイこと言うかなー・・・。マジ襲ってやろうかなー、なんて。冗談だけど。その代わりに、俺はをよしよしと撫でた。


「それは、ごめんな?」

「うん・・・。大丈夫・・・。嫌なわけはないから。」


そう言って、否定してくれたがほんっっっとカワイくて。


「他の男に、そんな顔するなよ?」

「・・・??どんな顔?」

「そーゆー顔。」

「???」


まだ不思議そうな顔をしてるに、思わず抱きつきそうになる衝動を抑えて、俺はとりあえず・・・。


「まぁ、いいや。そろそろ、帰るか!」


って、ご機嫌に言えば、はまた笑顔で、うんと頷いてくれるもんだから、やっぱ抑えられなくて、俺はに抱きついた。


「あ、赤也・・・!!」


慌てるも本当カワイイし。俺は、どれだけが好きなんだ?って思ったけど、そんなの俺にだってわかんねぇ。とにかく、すっげぇ好きってこと。誰にも渡したくないぐらいに。
だから、絶対離さないからな!
そんなことを思いながら、俺はを抱き締めていた。
それに。を不安にさせたら、柳生先輩に相談するってことも、よ〜くわかったし・・・。これからは、そんなこともさせないようにしてやるよ。









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一応、後編ということですが。まぁ、後日談的な話です。
なので、そんなに繋がりがあるわけじゃないんですよね・・・。それなのに、こちらも読んでくださった方、本当にありがとうございます!

前回は束縛がテーマだった割に、具体的な誰かに嫉妬するという描写が無かったので、今回はそれを書いてみました。その相手を誰にするかで、結構悩みましたねぇ・・・。
最初は仁王さんにしようかとも考えたんですが、仁王さんの場合、本気で奪うつもりなのかどうなのか、よくわからなくなって、赤也くんを困らせるだけになりそうだったので、止めました(笑)。その結果、絶対に奪ったりしない紳士な柳生さんになったんです!
そんなわけで、嫉妬するシーンがメインだったので、オチが甘いです。すみません・・・orz

('08/02/24)