「あ〜つしくんっ!」

部屋をノックしてから、ドアを開け、目当ての人に上機嫌で声をかけた。

「どうしたの、。」

・・・・・・・・・余談だけど。あれから、淳くんは私のことを「」と呼ぶようになった。私には「あっくん」と呼ばせてくれないくせに(と言うか、「そう呼んでもいいけど・・・そのためには、いろいろと条件があるよ?」と笑顔で言われるから呼べないでいる・・・)。
まぁ、今はそんなこと置いといて!今日は言いたいことがあって、ここに来たんだから。

「見て、淳くん!この間の写真、現像できたよ〜!」

「へぇ〜、本当だ。」

私は淳くんの前に座り、写真を並べた。この間、学校で体育祭があって、そのときに撮った写真だ。

「はい。これは淳くんの分。」

「わざわざ僕の分まで焼いてくれたんだ。ありがとう。」

「いえいえ。」

今日は平和な1日だ・・・。そう嬉しく思いながら、淳くんと写真を眺めた。

の分も見ていい?」

「どうぞ、どうぞ!」

「・・・クラス以外の子とも撮ってるんだ。」

「そうだね。1・2年のときに同じクラスで、今も仲良いって子いるから。例えば・・・ほら、この子は隣のクラスのちゃん。・・・さんって、知らない?」

「ん〜・・・あんまりわからないな。」

「そっかー。ちゃんとは、1年のとき同じクラスだったんだ。1年のときだけだったんだけど、それでも仲良い友達なんだ〜。あ、これはちゃんと『どっち勝つか?!』なんて感じで撮った写真だよ。」

「楽しそうだね。」

「うん!」

そんな他愛の無い、楽しげな会話が続いたのも束の間。急に、淳くんが不機嫌な口調になった。
・・・だけど、そのときの私は、まだそのことに気付けていなかった。それがまさか、あんなことになるとは・・・・・・。

「これは・・・?」

「ん?・・・あぁ!淳くんも知ってるでしょ?テニス部の赤澤くんだよ。」

「うん、それは知ってる。でも、って赤澤と接点なんてあった?」

「赤澤くんとは1年、2年と同じクラスだったんだよ。だから、結構仲良い方。今年も同じクラスになれなくて残念だった〜・・・。」

「へぇ〜、そう。」

この辺りで、私も淳くんの様子に気付くべきだった。それなら、まだ改善の余地があったかもしれない。でも、さっきまで楽しく喋っていた私のテンションは、まだ上がりっ放しで。その後、余計に災難を招くようなことをしてしまった・・・。

「それに、淳くんと付き合うようになってからは、赤澤くんが気を遣ってくれてるらしくって、全然喋れないんだ〜・・・。だから、このときの写真は、すごく久々に赤澤くんと絡んだときだよ。」

「そんなに仲良かったんだ。じゃ、僕が転校して来なければ、は赤澤と付き合ってたりして。」

「ハハ、それは面白いね!」

・・・だってさ、このときの淳くんは、すごく笑顔で言ってたんだよ??まぁ、それは“例の”笑顔だったわけだけど・・・。でも、冗談で言ったもんだと思うじゃない!だから、私はこういう反応をしたまでで・・・。

「僕は何も面白くないんだけど・・・?」

「えっ?あ、・・・そ、そうだよねっ!!ゴメンね、冗談でもこんなこと言って・・・。でも、私はちゃんと淳くんのことが好きだからね!」

「・・・・・・・・・。」

「ゴメンってば〜・・・。」

「許さない。」

「で、でも!元はと言えば、淳くんが先に言ったんじゃない!」

「でも、赤澤と仲がいいなんて話をしだしたのは、の方だ。」

「その赤澤くんの話をしだしたのも、淳くんでしょ?!」

「他の男と写ってるところを見て、何も触れない方が可笑しいんじゃない?」

「そ、そうかもしれないけど・・・。」

「とにかく、僕はを許さないから。」

そう言って、淳くんは黙り込み、すっと顔を背けてしまった。私も淳くんを怒らしたかったわけじゃないし、自分が余計なことを言ってしまったとも思ったから、私は必死で謝ったんだ。・・・・・・・・・それなのに・・・。

「本当にごめんなさい!だから、許して?ね?」

「・・・・・・・・・。」

「お願い、淳くん・・・。機嫌直してよ〜・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「ごめん・・・。何でもするから・・・。」

「・・・・・・・・・・・・何でも、する・・・?」

やっと少し反応してくれた淳くんに、私はこれがチャンスだ!とばかりに、謝り倒した。・・・だけど、本当は淳くんのチャンスだったんだ・・・・・・。

「うん、何でもする!だから・・・、許して・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・・・本当に?」

「約束する!淳くんの言うこと、何でも聞くから!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・約束、してくれるんだね?」

「はい、約束します!」

「・・・・・・わかった。そこまで言ってくれるなら。・・・僕の方こそ、ごめんね?」

「ううん!ありがとう、許してくれて!」

私がそう言うと、淳くんがニッコリ笑ってくれたから、安心して・・・。私も笑顔を返した。
これで話が終われば、平和だったのに・・・。

「それじゃ、。僕の言うこと、聞いてくれる?」

「うん。何すればいいの?」

「じゃあ、まず・・・、そこに寝転んでみて?」

「寝転ぶ・・・?」

「そう仰向けで、ね。」

私は訳もわからずに、淳くんの言う通り、仰向けに寝転んだ。

「こう?」

「そう。」

淳くんはそれだけ言うと、私の体を跨ぐように両膝をつき、両手で私の両腕を押さえた。私の視界には、淳くんの顔・・・とその後ろには、部屋の天井が見えた。

「!!あ、淳くん・・・!!?」

「何でも、してくれるんだよね・・・?」

「そ、そうは言ったけど!!」

「それじゃ・・・。」

そう言うと、淳くんは両肘を少しずつ曲げて、顔を近づけてきた。私が思わず目を閉じると、唇に軽く何かが触れ、チュッと音を立てた。

「・・・淳くん・・・・・・!」

次に目を開けたときは、さっきよりも淳くんの顔が近くなっていて、より動揺しそうになった・・・けど!!ここは、しっかりしなきゃ!!と思い、強い口調で淳くんの名を呼んだ。

「なに?」

「なにって・・・。」

「名前を呼びたかっただけ・・・?本当、は可愛いね・・・。」

そう言いながら、またゆっくりと淳くんの顔が近付いてきた。今度は、私も目を閉じたりしないで、もう一度、強く言った。

「待って!!そんなわけないでしょ・・・?!」

「じゃあ、なに?」

「だから・・・・・・私たち、中学生、だよ?」

「うん、それで?」

「だから、その・・・変なこととかは、できない。」

「変なこと、って?」

「そ、そんなの言えない・・・!!」

「クスクス・・・。大丈夫。」

今度はそう言って、また両肘を少し曲げた淳くんだったけれど、顔は近付いて来なくて、どちらと言うと天井ばかりが見えるようになっていた。と言うのも、淳くんの顔は私の顔の横にあったからだ。そして、淳くんはそこで囁くように言った。・・・つまり、私の耳元で。

「優しくするから・・・。」

そういう問題じゃない!!!!そう思うけど、この攻撃に弱い私は、また何も声が出なくなって、体も力が入らなくなってしまった。それでも、今回ばかりは気を抜いてはいられないと、私は頑張って声だけでも出そうした。でも、辛うじて出せたのは、か弱い声だけだった。

「・・・あ、つし・・・く、ん・・・・・・。」

だけど、そんな声でも効果はあったようで、淳くんは大人しく私からすっと離れてくれた。
よく考えれば(いや、よく考えなくとも!)、結構危ない状況だったんじゃないだろうか?でも、淳くんはやっぱり優しいって知ってるから。何となく、大丈夫だという気もしていた。

・・・。そういう声は出さないで・・・。そんなつもりはなかったのに、本気で襲いそうになるから・・・。」

ほらね。やっぱり、そんなつもりはなかったんだよ!
・・・・・・と思ったけど、その前に。さっきの声に、抑制の効果は無かったのか・・・!!
そういうことも言いたかったのだけど、まだ力の入らない私は、そのままの状態で何もできなかった。

「・・・・・・・・・。」

・・・?」

そんな私を心配して、淳くんが私の顔を覗き込んでくれた。

「・・・・・・。」

・・・大丈夫・・・?怖かった・・・?」

実際、驚いたし、焦ったし、どうしようもなかった。だけど、やっぱり淳くんを信じてたから。怖いという感情は無かったと思う。
少しずつ、体が思うようになってきた私は、小さく文句を言った。

「・・・怖くはなかった・・・でも、大丈夫じゃなかった・・・・・・。」

「そっか。ごめん・・・。」

「うん。」

淳くんは苦笑いをしながら謝ってくれた。私も、少し笑いかけたけど、また淳くんは、険しい顔に戻った。

「だけど、そう簡単に、『何でもする』なんて言っちゃ駄目だって、わかった?」

「わかった・・・。」

「それでよし。・・・だけど、今回は僕もやり過ぎた。ごめんね?」

そう言いながら、淳くんは寝転んでいた私を支え、座る体勢に戻してくれた。そして、そのまま私を包み込んで、頭をよしよしと撫でてくれた。・・・うん、やっぱり淳くんは優しいよね。

「本当、いい加減にしてほしいだーね・・・。」

「またっスか?」

「どうした、2人とも。」

「何でもないだーね・・・。」

「柳沢先輩も苦労してるんスよ。」

「ふーん、そうか。」

「ところで、赤澤は何しに来ただーね?」

「あぁ、そうだ。俺は木更津に用があるんだった。部屋に居るんだよな?」

「あ、赤澤部長・・・!今は・・・!!」

「ん?」

その後、赤澤くんがうっかり部屋に入ってきてしまい、淳くんの恐ろしい笑顔を向けられていたのは・・・・・・見なかったことにしよう。ごめん、赤澤くん!今度、ちゃんと謝るからね!!(たぶん、そんな機会は淳が作らせないだーね・・・。)









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超攻め再来!(笑)突然、「危ないっ!」って思うほどの攻め攻めな話を書きたくなりまして・・・。お相手は誰にしようかなー?と思ったのですが。ここは、超攻めの彼の出番だ!というわけで、久々の淳くんでした(笑)。

相変わらず、口調とかが今一わかんないんですよね〜・・・(汗)。しかも、今回は柳沢さん、裕太くんに加え、赤澤さんも登場。・・・皆さん、よくわかりません!(苦笑)
またいずれ、機会があればリベンジしたいと思います・・・!

('09/03/03)