「最近、オレらの部活を見学してる女子、多くね??」
「だよな!オレもそう思う!!」
「けど、ほとんどが吏人を見てるよな・・・・・・。」
「それを言うなよ・・・・・・。」
吏人はオレたちの気持ちを変えてくれた。それは感謝してる。けど!それとこれとは、やっぱ話が別だ!!
「そういやオレ、この間、吏人が告られてるっぽい場面に遭遇したぜ。」
「いつ?!どこで?!誰に?!」
「たしか、あれは・・・・・・一昨日だったと思う。1年の教室の近くの階段辺りで、妙に恥ずかしそうに吏人と話してる女子を見た。」
「どんな子?!!」
「う〜ん・・・・・・。オレも見たことある子だったんだよなー。・・・・・・なあ、佐治。」
「ん?何だよ、突然。」
「お前のクラスで、お前の席の・・・・・・左斜め前?その辺に、女子いたよな?」
「ああ・・・・・・。か?」
「たぶん、その子!」
「え?!佐治も知ってんの?どんな子、どんな子?!」
今度はオレが周りに聞かれ、オレは少し考える。
「どんなって言われても・・・・・・。そういえば。最近、も部活見に来てたな・・・・・・。」
「じゃあ、今日も来てたら言ってくれよ!」
「それは・・・・・・なんか、に悪い。」
「何だよー、佐治。お前、その子と仲良いわけ?」
「仲良いってわけじゃねェけど・・・・・・。」
「じゃ、いいだろ!」
「いや、余計に悪いだろ。それに、まだ告白って決まったわけじゃねェんだし、その辺、ちゃんと吏人に確認してから教える。」
「・・・・・・そうだよな。お前も恥ずかしそうに話してるとこを見ただけで、内容は聞いてねェんだもんな。」
「そうだな。それは、ちゃんと確認しよーぜ!そしたら、まだ吏人だけじゃねェかもしれねェ、って思える!!」
こうして、その日の部活後にでも、オレが吏人に聞いておけ、ということになった。
なんで、オレがこんなこと・・・・・・。でも、オレも気にならないと言えば嘘になるし、確認してから教えると言い出したのはオレ自身。・・・・・・ま、仕方ねェか。
それにしても、やっぱりがサッカー、あるいはサッカー部に興味があるのは意外だ。オレらの部活を見に来ていたことには気付いていたが、理由までは深く考えていなかった。だからと言って、それが吏人目的だったとするのも、あまり納得できない。
仲が良いわけではないと言いながら、こんなことを思えるのは、ある意味オレたちが互いに特別だからだ。と言っても、3年間同じクラスだというだけだが。それでも、オレたちにとって、そういう存在はオレたちしかいない。だから、他のクラスメイトよりかは、多少特別ではある。
今年の初めに、またクラスが同じだったというようなことを話して以来、特に会話らしい会話はしていないし、のことをよく知っているとは言えないが、何となく腑に落ちない。やっぱり、吏人に確認した方がいいな。
「おい、吏人。お前、最近、告白されたのか?」
「いえ、されてませんけど。・・・・・・突然、何の話ッスか?」
「一昨日、お前らの教室近くの階段辺りで、オレのクラスの女子が吏人に告白してるっぽいところを見たってヤツがいるんだよ。」
「一昨日・・・・・・先輩のクラスの・・・・・・。」
「何か思い当たることはないのか?」
「・・・・・・そういえば、3年のさんという人に話しかけられました。」
「ああ、そいつだ。告白じゃなかったのか?」
「はい。その人は自分のことを名乗った後、オレがサッカー部1年の天谷吏人かと訊いてきたので、そうだと答えたら、サッカー部を盛り上げてくれてありがとう、これからも応援してる、というようなことを言われました。」
「それだけか?」
「はい。全国制覇目指して頑張って、とも言われたので、当然ですとは返しましたけど、それ以上の会話は特にしていません。」
オレは、はっきりと話す吏人を見て、嘘を言っているとは思えなかったが、次の日、周りに説明しても納得されなかった。そして、今度はの方にも確認をしてみろ、と言われた。・・・・・・ここまで来たら、オレもとことん付き合ってやる。
こうして、次は部活後にを探すことになった。
「お、いたいた。おい、!」
「えっ・・・・・・。佐治君?!」
「今から帰るところか?」
「う、うん。そうだけど・・・・・・。佐治君も?」
「ああ、さっき部活も終わったしな。」
「そっか。お疲れ様。」
「ありがとう。で、は友達の誰かと一緒に帰る予定でもあるのか?」
「ううん。特に無いけど?」
「じゃあ、一緒に帰らねェか?」
「えっ?!いいの?佐治君こそ、部活のみんなと一緒に帰ったりしなくていいの?」
「別にアイツらと一緒に帰ることが決まってるわけじゃねェし、オレはいいけど・・・・・・は困るか?」
「ううん!全然!」
大げさなぐらい顔を横に振ったを見て、思わず笑みがこぼれる。でも、これじゃ、のことを笑ったみたいになってしまうな。
気付かれて、機嫌を損ねられる前に、本題に入ってしまおう。
「ところで、。突然だけど・・・・・・。お前って、吏人と知り合いなのか?」
「えっ?どうして??」
「この間、が吏人と喋ってるところを見たってヤツがいるんだけど、何か話すことでもあったのか?」
「あれか・・・・・・。ううん、知り合いじゃないよ。ただ、天谷君って有名人でしょ?あんな派手なパフォーマンスしたし。だから、ちょっと身近で見てみたいなーっと思って。」
「へえー・・・・・・。それって、もしかして・・・・・・吏人に惚れた、とか?」
「ええっ?!ち、違うよ!!」
「怪しいな・・・・・・。まさか、そのとき告白してたんじゃ・・・・・・。」
「そんなんじゃないって!ただ、サッカー部の応援をしてるって言っただけ!」
「わざわざ吏人に?」
「う、うん・・・・・・。だって、今のサッカー部があるのは、天谷君のおかげでしょ?だから、まずは天谷君に言うべきだと思って。」
「吏人のおかげ、か・・・・・・。たしかに、の言う通りだな。でも、吏人がサッカー部を変えた原因だ、ってよくわかったな。」
「見てればわかるよ。」
見てれば。は少し笑いながら、何気なく言った。でも、見てれば、っていうのは、一定期間継続されてこそ、言えることだよな?は、昔からサッカー部を見ていたのか?
そう考えて、オレは、オレたちが1年だった頃の最初の最初を思い出した。あのときは特に意識はしていなかったが、同じクラスの女子がサッカー部を見ていたことがあった。今思えば、あれはだったに違いない。
「そういえば、1年の頃、サッカー部を見に来てたよな?」
「え?!覚えてくれてるの?!!」
「と言うか、今思い出した。あのときは、クラスで見たことのあるヤツがいるな、って程度のことしか思ってなかった。」
「そ、そっか。でも、気付いてたんだ。」
「そうだな。・・・・・・でも、最初の方だけだよな?それこそ、今年だって吏人が来る前は、の姿を見たことなかったし。」
「だって・・・・・・、やる気のないサッカー部は見たくないもん・・・・・・。」
そのやる気のないサッカー部を率いていたオレの前では言いにくかったのか、は視線を少し下に逸らせた。
どんな理由があったにしろ、それは事実であり、がオレに気を遣う必要は全く無い。だから、オレはあえて明るく答えた。
「俺もそう思う。だから、吏人には感謝してるし、今のサッカー部が好きだ。」
「うん、私も。」
そのおかげで、も笑顔でそう答えてくれた。それを見て、オレの鼓動が少し早くなる。
・・・・・・一応、褒められてるわけだし、少しぐらいテンションが上がろうと不思議ではないだろう。そう思い、深く考える前に、オレは話を続けた。
「それにしても、がそこまでサッカー好きだったとはな。」
「いや、サッカー好きってほどでもないよ。ルールもあんまりわからないし。ただ、自分の学校の部活が頑張ってるなら、応援したいなって思っただけ。」
「それで、実際に部活を見に行こうって思うんだから、サッカー好きなんじゃないのか?」
「なるほど・・・・・・、そうかもね。」
「何だよ、自分でわかんねェのか?」
「ヘヘ。」
オレが笑って言えば、も笑い返した。・・・・・・本当、面白いヤツ。
「でも、ルールは知らねェんだっけ?」
「そうなの。」
「別に難しいことはねェと思うけど、オレでよければ教えてやろうか?」
「えっ?いいの?!」
「おう。っつっても、口で説明してもわかりにくいだろうし、見てる方が早いと思うぜ。」
「でも、見ててもわからないところは聞いてもいいんだよね?」
「オレでよければ、な。」
「むしろ、喜んで!じゃあ、明日からの部活もちゃんと見ておこうっと。で、わからないところがあったら、次の日にでも、佐治君に聞くね!」
心底嬉しそうに言うを見ると、少しでもの役に立ちたいという思いが出てきた。
それに、オレらのことも応援してくれてるんだし、少しぐらい恩返しをした方がいいよな。
「がいいなら、その日でもいいぜ。今日みたいに、こうやって話しながら帰ればいいだろ?」
「ええっ?!い、いいの・・・・・・?」
「ダメなら、最初から提案しねェよ。」
「そ、そう・・・・・・?じゃあ、お言葉に甘えて、そうさせてもらおうかな・・・・・・?」
「大したことはできねェけどな。」
「ううん、そんなことないよ!すごく有り難いです!」
そんなわけで、オレたちは一緒に帰ることになった。だが、そこまで説明する必要はねェだろうと、オレは簡単にやはり告白ではなかったらしいことだけをみんなに伝えた。
「ふ〜ん・・・・・・。でも、それだけで普通見学に来るか?」
「それだけ、サッカーが好きなんだろ。と言うより、ハマり出したって感じか。」
「そのきっかけは吏人に惹かれたから!とかじゃねーの?!」
「まだ言うか・・・・・・。」
「でも、何かきっかけがあるはずだろ?」
「そこまでは知らねェけど・・・・・・。」
「じゃあ、それも聞いてくれよ。」
「なんでオレが・・・・・・。」
「・・・・・・よし、わかった!じゃあ、オレが聞く!!」
「はァ?」
「じゃあ、オレも行く!」
「何言って・・・・・・。」
「だって、自分たちで聞いた方が早ェだろ?」
「あと、さんって子がどんな子か見たい!」
「もしかしたら、オレがきっかけって可能性も・・・・・・。」
「それはねェって!」
その場にいたらヤツらが全員で、そんなことを言い出した。・・・・・・もう知らねェ。
「・・・・・・わかったよ。たぶん、今日も見に来るだろうから、部活終わった後、にお前らのこと紹介してやる。」
そうは言ったものの、なぜかモヤモヤとした気持ちになる。と2人で帰れなくなるであろうことが気に掛かる。
一体、オレは・・・・・・。
「。」
「佐治君。・・・・・・それに、サッカー部のみんな??」
「こいつらがに聞きたいことがあるらしい。」
「私に?」
「そう!突然だけど。なんで、サッカー部を見に来るようになったか、そのきっかけを教えてくんない?!」
「えっ・・・・・・。えっと・・・・・・。サッカー部が頑張ってるから、応援しようと思って。」
「オレらが頑張ってることを知った、そもそものきっかけは?!」
「・・・・・・・・・・・・天谷君が派手なパフォーマンスをしてたから。」
「ほら、見ろ、佐治!やっぱり、吏人目当てじゃねェかー・・・・・・!」
「えっ?!天谷君目当て?!違うって!そ、そんなんじゃないよ!!」
「でも、最初のきっかけは吏人なんだろー?」
「う〜ん・・・・・・。そういうわけでもないんだけど・・・・・・。」
「じゃあ、最初のきっかけって?」
は困った顔をしながら、少しオレの方に目を遣った。・・・・・・もしかして、オレに助けを求めてるのか?
「オイ、お前ら。もういいだろ。吏人じゃねーってことがわかったんだから。」
「だけど、気になるじゃん!佐治は気になんねェの?」
「気になるとか、気にならないとか、そういう問題じゃねー。大体お前ら、今までとまともに話したこともねェだろうが。そんなヤツらに、急にいろいろと聞かれるの身にもなってみろ。」
「んー・・・・・・。それもそうだな。よし、じゃあ、これから仲良くなろうな、さん!」
「う、うん。ありがとう。こちらこそ、よろしくね。」
「こんな可愛い子と友達になれるなんて、オレたちもラッキーだよな!」
「おう!」
「そんなこと・・・・・・。」
「で、どんなきっかけ?」
「・・・・・・。」
「早すぎるだろ。」
「でもよー、佐治。仲良くなった、なんていつわかるんだよー。」
「少なくとも、今は早すぎる。だから、お前ら、今日はもう帰れ。」
「えー!」
「えー、じゃねェ。どうせ、この後も聞きたくなって、を困らせるだけだ。」
「しゃーねェなー。じゃ、先に帰るわ。佐治、お前は?」
「オレはを送っていく。」
「んじゃ、さんは頼んだぞー。さん、これからよろしく!んで、佐治をよろしくなー。」
「あ、うん!またねー。」
「・・・・・・ったく。」
「楽しそうだね。」
「いいんだぞ、。うるさかったら、うるさいって言ってくれれば。」
「ううん!そんなことないよ。私もサッカー部の仲間に入れてもらえたみたいで嬉しかった。」
「じゃあ、あいつらも一緒に帰った方がよかったか?」
「えーっと・・・・・・それは、ちょっと困るかも。だから、さっきみんなのことを止めてくれて助かりました。ありがとう。」
「それはよかった。」
笑顔でそう言ったを見て、ひとまず安心する。がオレに助けを求めたように見えたのは、オレの勘違いではなかったようだ。
「きっかけは、どうしても話せないことじゃないんだけどね。佐治君の言うように、いきなり、しかも、あんな大人数に聞かれたら、ちょっと言いにくくって。でも、何だか勿体ぶった感じになって、余計に話しづらくなっちゃったね。」
「なら、そのことも踏まえて、一旦オレから説明しとくか?どうせ、あいつら、また聞きに来るだろうけど、オレから聞いてる分、にそれほど深くは聞いてこねェはずだし。」
「そ、そうかな・・・・・・。」
「おそらくな。だから、さえ良ければ、オレに話してくれないか?」
まるで、のためのように、オレはそう言った。でも、そうじゃない。本当は違う。
正直、どうして昨日に、そのきっかけまで話してくれなかったのか、それが気になっていた。たしかに、オレだって、とそれほど親しいわけじゃない。でも、あいつらよりは仲良いだろ?
・・・・・・もう、わかっている。
オレはに特別な扱いをされたいんだ。オレにとって、が本当に特別な存在なのだと気付いたから。
「そんな風に言われると、また話しづらいね・・・・・・。でも、佐治君に言いたくないわけじゃないの!え〜っと、だから、深く考えずに聞いてほしいって言うか・・・・・・。」
「わかってるって。むしろ、そうやって弁解すればするほど、どんどん言いづらくなるんじゃねェの?」
「た、たしかに・・・・・・。じゃあ、話すね?そもそも、私がサッカー部を見に行くようになったきっかけは、佐治君の一言だった。」
「オレ・・・・・・?」
「うん。自分のやりたいことが見つからずに、結局私は何の部活にも入らなかった。そんな中、いつも通り家に帰ろうとしたら、サッカー部の活動が目に入った。何となく見てみれば、クラスで見たことのある男の子がいて、ちょうど彼が入部の挨拶をしているときだったの。」
「それが、オレ・・・・・・。」
「そう。そのとき、佐治君は言った、今年全国大会に行きたい、って。その後、先輩たちは馬鹿にしてたみたいだけど、私は佐治君が羨ましかった。」
「羨ましい?」
「だって、何がしたいかわからなくって、部活に入らなかった私。その一方で、同じクラスの男の子は、周りに笑われるほどの大きな目標を持っている。羨ましがるだけじゃなくて、せめて彼を応援したい、私はそう思った。・・・・・・それが、そもそものきっかけ。」
「でも、その後、オレは・・・・・・。」
「佐治君は、って言うより、サッカー部全体の士気が下がっていた。だから、私も見に行かなくなった。」
「それが今年、吏人が入ってきたことで、サッカー部がやる気を出した。それで、もまた見に来てくれるようになったのか・・・・・・。」
「そういうこと!」
嬉しそうに言い切った。それを聞いて、オレも嬉しくないわけはなかった。
「そうか・・・・・・。ありがとう。」
「お礼を言いたいのはこっちだよ。私、頑張ってる佐治君の姿を見て、いつも元気をもらってるから。・・・・・・でもね、こういうことを言うと、みんなに誤解されるんじゃないか、って思って。みんな、天谷君目当てじゃないかとか言ってたから。あ、でも!佐治君目当てだと思われることが嫌なわけじゃないよ?!何て言うか、そう言われると、いろいろと面倒そうだからって意味で・・・・・・!」
「だから、そういうことを言うから、余計に怪しまれるんだよ。」
オレが笑って言えば、も楽しそうに笑う。今は、これだけで充分だった。もちろん、の気持ちを確かめたいと思わないこともない。だが、オレ自身、自分の気持ちがはっきりとわかっていなかった。
だから、これからもっとを知り、にももっとオレを知ってもらい、それで、お互いがお互いにとっての特別な存在でありたいと望むようになればいいと、オレは思った。
そんなことまで説明するわけにはいかないが、のことは、周りにも話しておいた。・・・・・・予想通り、すぐには納得しなかったが。
「やっぱり、佐治目当てか。」
「いや、だから、違うって言ってんだろ。」
「そんなことねェだろ。さんも恥ずかしいんだろうなァ。」
「お前ら・・・・・・。また、そんなこと言って、を困らせんなよ?」
「わかってるって!オレらからは何も言わねェよ。佐治が言うまでは、な!」
・・・・・・わかってねェだろ。
そう思わないではいられず、オレはため息をついた。だが、一方で目の前のヤツらは妙に嬉しそうだった。
とりあえず、には迷惑をかけねーようだし、これ以上何も言わないでおくことにした。どうせ、説明すればするほど、疑うだけだろうからな。
諦めたオレはこいつらから目を逸らし、空を見上げた。その空には雲ひとつ無く、まさに快晴、絶好の部活日和だ。今日も全国制覇目指して頑張るとするか。
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頑張りました、初佐治夢!(笑)しかも、私には珍しく、両思いを匂わせながらも、くっつかずに終わる、という話。佐治さんは自信を持てない人なので、こういうこともゆっくりそうだなよな〜と思ったのです(笑)。
でも!やっぱり、物足りない!!くっつく話も書きたい!!(←)
ので、いずれ続編も書くつもりです(笑)。まだ慣れないので、ペースはいつも以上に遅いですが(汗)、何とか頑張ります!
('11/05/12)