今日は、ホワイトデー当日。バレンタインデーほどではないけれど、やっぱり学校の雰囲気はどこか浮き足立っているように感じる。
1週間前までは、いろいろと気にしていた私だったけど、に相談したり、日吉と仲良く帰っていたりしたら、ほとんど気にならなくなった。今日はただの3月14日、それぐらいの意識だった。

あ、そういえば。今日は榊先生の誕生日だって聞いたことがある!おめでとうございます、先生!
そんな榊先生は、私にとっては音楽でしか知らないから、ちょっと厳しそうで怖そうなイメージがある。でも、先生は女子生徒からも人気があって、部活でたくさんプレゼントを渡されているところを見た。しかも、「今は部活中だから、後にしてもらえるか?」なんて困りながらも紳士的なやり取りをしている先生を見て、意外と優しい先生なんだなぁって思い直した。


。待たせたな。」

「ううん。お疲れ、日吉。」

「あぁ。」


部活終わりの日吉と会って、日吉たちにとっては、顧問である榊先生って、どういうイメージなんだろうと思った。私以上に、厳しいイメージがあるのかな?
突然、そのことが気になって、私はさっき見た、榊先生の様子を日吉に話しながら、帰ることにした。


「――って感じで、先生って意外と怖くないんだなぁ、って思ったの。・・・日吉は、榊先生のことどう思ってる?」

「・・・たしかに、部活では厳しい一面を見ることが多いが、それは俺たちに必要なことであって、怖いとは思ったことはない。」


それを聞くと、怖くないと思っているのは、日吉ぐらいなんじゃないか、って思えたけど・・・。ある意味、日吉って優等生的回答だよね。でも、それが日吉らしいと思う。


「そっかー。その厳しさも、生徒を思っての優しさなんだろうね。」


なんて、私も優等生的回答をしちゃって、思わず笑う。それなのに、日吉は何故か神妙な面持ちで話し出した。


「・・・・・・・・・。」

「ん?」

「今日が何の日か知ってるか・・・?」

「え・・・?榊先生の誕生日?」

「そうじゃなくて・・・。一般的に、だ。」


ついさっきまで、榊先生の話をしてたんだから、急にそんなことを言われるとは思ってなかった。
それは、もちろん知ってるけど・・・。


「え〜っと・・・。ホワイトデーってこと?」

「それで・・・。これ。」


そう言って、日吉は鞄から細長い箱を取り出した。


「・・・・・・・・・私に?!」

「当たり前だろ・・・!」


ちょっと怒りながらだったけど、これは照れてるんだと思う。・・・本当、嬉しいよ!!


「うわぁ・・・!ありがとう!!何だろう?何の箱だろう?」


日吉から、それを受け取ると、私はまじまじと観察した。


「早く帰って、早く開けたい・・・!!」


もうホワイトデーのことなんて、あまり気にしていなかったからこそ、嬉しさが倍増してる。この中身が何であっても、私はすごく喜ぶと思う。だって、日吉が選んでくれた物だから。でも、それが何なのかを早く確認したいという気持ちも倍増してると思う。


「・・・俺はそういうの、よくわからないから。」


相変わらず照れながら、少し視線を逸らしてそう言った日吉にも、愛しさが倍増だ。


「ありがとう!!日吉、大好き!!」

「バ・・・!お前、こんな所で何を言い出すんだ・・・?!」


こんな所で、って言うけど、別に人通りもそんなに多くない、ただの道だ。それに、今は部活後の夕方だから、外で遊んでる子供たちもいないし、お仕事から帰ってくる大人の人もいない。・・・よく考えれば、1人で帰るのは、ちょっと危険な道かもね。でも、住宅街でもあるから、何かがあれば、すぐに助けを呼ぶことはできる。だけど、そんな人の家の中まで聞こえるほど、大きな声で言ったわけじゃないもん。


「大丈夫。誰もいなし、誰にも聞かれてないよ。」

「そういう問題じゃない・・・。」


納得できないという表情で、日吉がため息を吐いた。そんな日吉に私が笑っていると、日吉が私の頭に手を伸ばした。前みたいに叩かれるのか、くしゃくしゃにされるのか。後者だったら困るけど、今はそんなこともいっかって思えるぐらい嬉しかったから、その手を止めなかった。


「はぁ・・・。本当、仕方ない奴・・・。」


でも、その手はどっちでもなかった。日吉は、そう言いながら、私の頭を撫でてくれた。
予想外な日吉の行動に、私はそのまま日吉の方を見て、首を傾げた。


「日吉・・・?」

「・・・誰もいないと言ったのは、お前だからな。」


日吉はそれだけ言うと、今度は両手を伸ばし、私をすっぽりと包みこむように抱き締めてくれた。
・・・わー!!だ、だ、抱き締められて・・・!!!
本当に驚きすぎて、私はただ固まってしまった。


・・・。」

「は、はいっ・・・!」


しかも、超至近距離で名前を呼ばれて、思わず丁寧に返事してしまう。


「俺も・・・好きだ。」


わー!!!!!わー!!!!!何てことだ・・・!!!こ、こんな近くで、日吉に好きって・・・!!!
嬉しいことなんだけど、やっぱり恥ずかしさが勝って、私は固まったままだった。日吉が離れても、その恥ずかしさは無くならなくて、顔がすごく熱かった。
そんな私を見て、日吉は少し笑うと、またからかうように言った。


が先に言ったんだからな。」


それはそうだとしても!!私は、抱きついたり、近くで言ったりしてないもん!!ただ、大好きって言っただけだもん!!
・・・なんて反論も口にすることはできず、一言だけ返した。


「・・・・・・ズルイ。」

「お互い様だ。」


何がお互いだ・・・。絶対、日吉の方がズルイ。


「ほら、帰るぞ。」


今度はそう言って、手を繋いでくれて・・・やっぱり、ズルイよ。
私は負け惜しみで、もう一言だけ返した。


「私の方が好きだもん。」

「馬鹿。俺も負けねぇよ。」


なのに、それにもあっさりと返されてしまった。・・・悔しいけど、好きだから許してあげる。
何だか、すごく恥ずかしいやり取りをしてるとは思うけど、すごく幸せを感じながら帰ることができた。

その後、家に帰って早速、日吉から貰った箱を開けると・・・。そこにはシルバーアクセのようなストラップが入っていた。すごく可愛いデザインってわけじゃなく、結構シンプルなデザインだったけど、だからこそ、何にでも着けられると思った。・・・そんなことまで日吉が考えてくれてたのかはわからないけど、とにかくもうすごく嬉しくて、もう1度、メールでお礼を言っておいた。
明日から、絶対このストラップ使おうっと!そうやって、何処に着けるかを考えるのも、すごく幸せだった。









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ちゃんと、日吉くんはお返しをくれましたー!しかも、日吉くんにしてはラヴラヴしちゃってます。
今年はバレンタインデーを向日さんにしちゃったので、その分も兼ねて、日吉くんには頑張ってもらいました(笑)。

前回の「いつも以上に優しかった理由」は次の話で解決します!
何にせよ。榊監督、おめでとうございます!!(笑)

('08/03/14)