学校がある日は、間違いなく、これだ!そう思って、私は筆箱に着けることにした。鞄でも良かったけど、それだと、すぐに何かにぶつかってしまいそうだったから。それに、筆箱だと、授業中でも日吉のことを思い出せるもんね!
そんな不真面目なことを考えながら、筆箱を見つめて、ニヤニヤとしていた。
「おはよう、。昨日はどうだった・・・・・・って、聞くまでもないか。その顔を見ると。」
「おはよー、♪」
「はいはい。で、何か貰えたの?」
半ば呆れられながら、私は昨日の出来事や貰った物、そして筆箱に着けていることを説明した。
「・・・本当。バカップルっていうのは、こういうのを言うんだろうね〜。」
「そう言うは、どうだったのー??」
「私も前に言ってた心配も無く、ラブラブでしたよ。」
そんなこと、よく言えるもんだなぁ、と思ったけど、事細かに説明した私の方が恥ずかしいんじゃないかと思って、慌てて聞いた。
「どんな話とかした??」
「そうねぇ・・・。言うな、って言われてるんだけど。」
「大丈夫!私、誰にも言わないよ!!」
もちろん、仲良しのとの約束なら、絶対に口外しない。・・・だけど、鳳くんに口止めされるような話って一体どんな話なんだろう?
「まぁ、言っても私には害が無いから。それに、が幸せそうな顔してるから、教えてあげる。」
はそう言いながら、コッソリと話し出してくれた。
「はい、これ。」
「うん、ありがとう。・・・本当、長太郎ってそういうのすんなり渡せちゃうよね。」
「そうかな?俺だって、多少緊張したりしてるよ?」
「そう?そんな風に見えないけど?じゃあ、他の女の子にも、緊張すんの?」
「えぇ?!他の子には貰ってないし、返してもないよ?」
「へぇ〜、そうなの。」
「そうだって!」
そこまで聞いて、私は不思議に思った。だって、その報告なら、さっきも聞いた。ってことは、既には、鳳くんに言うなって言われてた話をしちゃったってこと?
「そんな話を口止めされてたの?」
「違う、違う。重要なのは、この先。」
話の腰を折ってしまった私を責めたりはせず、は続きを話した。
「だから貰いたいと思うし、渡したいと思う。でも、その分やっぱり緊張もするよ。」
「へぇ〜?」
「本当だって!たとえ彼女でも、好きな子には緊張するもんだよ。」
「まぁ、そういうもんか・・・。」
「うんうん。あ〜・・・でも。日吉ほどではないかも。」
「たしかに、私もほどではないと思う・・・・・・って、日吉くんが何か言ってたの?」
「うん。」
「のことで?」
「うん。」
「そんな話、アンタにしたの?あの日吉くんが??」
「うん、そうなんだ。本当、珍しいよね。俺も最初は驚いたよー。」
「・・・で、どんな話?」
「さすがにに言ったら怒られるから。」
「そんなの知らない。私はの為に聞きたいの。もいろいろと悩んでんだから。」
「酷いなぁー。まぁ、俺からも、さんは何も悩む必要は無いって、言ってあげたいぐらいだけどね。」
「じゃあ、話して。」
「う〜ん・・・。じゃあ、日吉には俺が言ったってこと、内緒だからね?」
そこまで話すと、は私に聞いた。
「ってことなんだけど・・・。聞きたい?」
「うん!うん!!」
こんな中途半端なところで話を終わられたら気になるし、それに日吉の話なら、尚更だ。しかも、鳳くんの話し方からして、私が嬉しくなる話であることには間違いなさそうだし。
「んじゃ、ここからは、長太郎から聞いた話ね。」
がそう言って、鳳くんが1週間前に日吉と喋ったという話が始まった。
「鳳。」
「ん?どうしたの、日吉。」
「お前、1週間後、どうするつもりだ?」
「え??1週間後って・・・ホワイトデーのこと?」
「・・・あぁ。」
「どうするって・・・?」
「お前も何か渡すんだろ?」
「あぁ、にね。・・・それが?」
「・・・・・・俺は、そういうのにあまり興味が無いからな。」
「えぇ?!じゃあ、さんに渡さないつもりなの?!」
「そうじゃない・・・!こっちは貰っておいて、返さないのはさすがに悪い。」
「なんだ・・・。ビックリした・・・。それなのに、興味が無いって・・・どういうこと?」
「だから、俺はに何を渡せばいいのか、思いつかない。不本意だが、お前が渡す物を参考にしたいと思ってな。・・・本当に、不本意だが。」
「そこまで言われたら、俺も教える気が無くなるよ。」
「・・・・・・。」
「冗談だって。教えたいとは思うけど、俺もまだ思いついてないんだ。・・・まぁ、自分で言うのも何だけど。こうやって、の為に何がいいだろうって考えてる時間も、俺はプレゼントの1つなんじゃないかと思うんだ。それで出た答えが、本当にの欲しい物かはわからないけど、俺の気持ちは伝わると思ってる。・・・と言うか、そう思いたいだけかな。でも、さんも日吉が選んでくれた物なら、何でも喜ぶんじゃないかな?さん、日吉にべた惚れだし。」
「あまり参考にならないな・・・。」
「でも、日吉だって、さんに何を貰ったか知らないけど、嬉しかったでしょ?少なくとも、俺はから受け取れて、すごく嬉しいもん。それに、が俺の為にこれをくれたんだ、って思うとすごく幸せだと思うしね。」
「・・・たしかに、そうだな。」
「でしょ?だって、日吉もさんにべた惚れだもんね!」
「なっ・・・!!」
「あれ?違うの?俺は正直、にべた惚れだからね。すごく嬉しいよ。日吉は違うんだ?」
「・・・・・・お前に言う必要は無いだろ。」
「それも、そうだね。でも、日吉って、あんまり『好きだ』っていう表現しないタイプでしょ?ホワイトデーとか、そういう行事で伝えるのも大切だとは思うけど、日頃からもそういうのって大事だと思うよ〜。」
「お前に言われる筋合いは無い。」
「そうかもしれないけど、日吉だって本当にさんのこと好きなんだから、少しぐらいそういうことしたっていいと思うよ。日吉の場合、スキンシップとか苦手そうだし、手繋ぐぐらいしたらいいんじゃない?」
「・・・・・・・・・・・・放っとけ。」
「さんを思って言ってるんだから。まぁ、考えるだけ考えといてよ。・・・ところで、ホワイトデーのことは、もういいの?」
「・・・・・・あぁ。自分で考えることにする。・・・お前に聞いたのが間違いだったかもしれないがな。」
「ハハハ。それは、ありがとう。」
そして、は話を終えた。
「そんな感じだったらしいよ。」
言いたいことがいろいろありすぎて、何から言えばいいのかわからない。
鳳くん、私が日吉にべた惚れしてるとかバラさないでよ!とか。
にべた惚れしてるってことをよく本人を前にして話せるなぁ、鳳くんは。とか。
やっぱり、鳳くんは女心を理解してくれてるよね〜・・・。とか。
日吉が私にべた惚れなんて、そんなわけないよ!とか。
でも、日吉なりに私のことは好きでいてくれてることはわかった。とか。
ちゃんと鳳くんは答えてくれたのに、日吉は素直にお礼が言えないんだから・・・。とか。
でも、鳳くんはそれもわかってくれてるんだなぁ。とか。
「聞けて良かった?」
「うん!それは、もちろん!!ありがとう、。」
「いいえ。」
がニッコリ笑って、私も微笑み返す。・・・でも、本当にいろいろ言いたいことがありすぎて、何て言ったらいいのか。
とりあえず・・・。
「たしかに、1週間前の日吉は、ちょっと可笑しかった。」
「何かあったの?」
「何かあった、ってわけじゃないんだけど。・・・いつも以上に優しかった。」
「じゃあ、長太郎のお節介を少しは聞いてくれたんだ、日吉くん。」
「そうみたいだね。」
そう言って、私たちは笑い合った。1週間前、私たちがちょっと悩んでいたのと同じように、彼ら2人も何かしら私たちのことを考えていてくれたみたいだ。
「結局、私たちの悩みは取り越し苦労だった、ってことね。」
「そういうことだね。」
にそう言われて、私も頷く。
あ〜・・・。だんだん、と鳳くんの話の有り難味が増してきた。と言うか、その話だけじゃなくて、1週間前の日吉の行動や昨日のこととか、全部引っ括めて、私って幸せ者だなぁ・・・って、どんどん感じてきた。
「〜。顔がニヤけてるわよ。」
「仕方がないよ。だって、私は日吉にべた惚れだもん。」
「はいはい、わかってるよ。・・・授業中、それを見すぎて、ボーッとしないようにね。」
「は〜い!」
私が調子よく返事をすると、にはまた呆れたように笑われてしまった。
でも、そんなの気にしない。だって、口には出さないけど、鳳くんのことべた惚れだもんね?きっと、私の気持ちもわかってくれてる。そう思うと、自然と次の言葉が出てきた。
「のことも、もちろん大好きだからね。」
「ありがとう。私も大好きよ。」
「ハハ、お互いに何言ってんだろー?」
「幸せボケしてるんでしょ?」
「そうだと思う。」
もう、本当に幸せだー!!ってなってきた。テンションがヤバイ。ホワイトデーで、こんなに幸せを感じられるとは思ってなかったよ。想像以上!
ホワイトデーも夢見ていいんだね。お菓子会社の陰謀だとしても、実際にこうやって幸せを感じられたら、それすらも有り難いと思う。・・・の言う通り、幸せボケしてるんだろうね。
それでもいいじゃない!だって、幸せなんだから。ね?
そう思いながら、私はストラップを見つめて、また幸せを噛み締めていた。
← Back Next →
この話は、親友とイチャつくのが目的(←語弊があるよ!)だったので、日吉くんとの直接的な会話は無かったですね。その代わり、日吉くんが1週間前、どうして優しくしてくれたのか、という理由が判明しました!
っていうか、今年、15日は土曜日だから、普通学校は休みですよね・・・。うわぁ・・・。私的には頑張って、日にちも考えて更新したつもりだったのに・・・。不覚!!
その辺は、大目に見ていただけると、助かります・・・(汗)。
('08/03/15)