日吉の誕生日から2週間以上が経ち、――今日は、クリスマス・イブだ。

一応、日吉の誕生日に私から告白したような形となって、私たちは一応付き合っていることになっている。・・・・・・一応。
別に卑屈になってるとかじゃないんだけど・・・。相手が日吉、だからね。
あれから、2人きりの甘い時間を過ごすわけもなく(過ごしたら過ごした、で気持ち悪いと思うけど・・・)。どこかに遊びに行くわけもなく(だって、部活もあるしね)。こまめに連絡するわけもなく(・・・まぁ、これもやったらやったで、日吉らしくないと思うけど)。
そんな感じで、以前とほとんど変わらない関係。・・・変わったと言えば、部活が無い日でも一緒に帰るようになった・・・ぐらいだ。(でも、これでも、すごい進歩だと思う!)

だから、今日はどうするんだろうとか思ったり。だって、クリスマス・イブって、日本じゃ恋人同士が過ごすイベントの1つじゃない?・・・そりゃ、日吉がそんなものに興味があるとは思えないけど。だけど、(普段の言動から、そうは見えなくても・・・!)生物学上『女』である私は、少しぐらい気になるわけで。しかも、今日は運良く部活が休みなわけで。ちょっと寄り道するぐらい良いんじゃない?とか思ってしまうわけで。
でも、そんなこと言える空気じゃないんだよね・・・、日吉と帰ってる時って。と言うか、日吉相手に、そんなこと言えない。
たとえ言ったとしても・・・私の予想、その1!


「日吉ー。今日、何の日か知ってる??」

「・・・・・・クリスマス・イブか。・・・それが、どうした?」

「・・・何も無いです・・・・・・。」


と日吉は興味なし!!
その2!私がもう少し頑張ったとすると・・・。


「そうだよ!クリスマス・イブ!だから、ケーキでも食べに行かない?」

「甘い物は、あまり好きじゃない。」

「そうですか・・・。」


と何かと理由をつけて断ってくる!!
その3!さらに、私が粘ると・・・。


「じゃあ、何処でもいいや。何処かに行かない?」

「・・・何の為に、だよ。クリスマス・イブだからって、何かする必要あるのか?」

「はい、ありませんね・・・。」


結局、無理・・・!!どうせ、その後・・・。


「大体クリスマスと言うのは、キリスト教の――。」


とか『説明』と言う名の『追い討ち』をかけられるに違いない・・・!!
というわけで、やっぱり諦めた方がいいよねー・・・。いや、でも、とりあえず言うだけ言ってみる価値はあるかもしれないし・・・。





「おい、?どうかしたのか。」

「ん?別にー。」

「今日は部活も無いし、さっさと帰るぞ。」

「は〜い。」





本当はかなり驚いたんだけど。私は冷静ぶって荷物を持ち、日吉の横に並んだ。

さぁ、言おうか。それとも、言わないでおこうか。

そんなことを考えながら帰っていると、いつもよりタラタラとした歩き方になっていた。そんな普段とは様子の違う私を心配して、日吉は声をかけてくれた。





、やっぱり何かあったのか?」

「別に。何でもないよ。」





ただ、今日のことが気になってただけ。
・・・・・・本当、いつから私も、こんな考えができるようになったんだろうね。でも・・・、日吉に迷惑をかけるような考えは必要ないのに。そう思って、私は少しだけ視線を落とした。
それを見て、日吉は余計に心配をしてくれた。





「・・・そこの公園で少し休むか?」





ありがとう、日吉。そんなことしなくても大丈夫だよ。
・・・だけど、これって少しは寄り道になるよね?そう考えて、日吉の言葉に甘えることにした。





「じゃあ、やっぱり、そうさせてもらう。」





私がそう言って、私たち2人は公園に入った。日吉に促されてベンチに座ると、目の前に日吉がいた。





「日吉?座らないの?」

「あぁ。俺は大丈夫だからな。」

「そっか。」





自分だけ座るのは悪いと思ったけど、自分の前に日吉がいるという状況が何だか心地良くて。日吉が座らなくてもいいと言うのなら、このままでいようかなと思った。





「荷物だけでも置く?」

「・・・いや、いい。」

「そう?」





やっぱり、自分だけ座るのは気が引けると思って、そう言ったんだけど・・・。日吉がいいって言ってるんだから、いいよね?それに、今の私と日吉の距離。私はこの状態が気に入ってしまったんだ。
目の前に日吉がいる。だけど、日吉は立っているから、ベンチに座っている私は、ほんの少しだけ見上げなければならない。この状況が何となく、日吉に見守られているような気がするから。
そんなことを感じながら、日吉をじっと見つめていると、日吉は私に「どうかしたのか?」とでも言うように、少し首を傾げた。その仕草が可愛くて、その優しさが嬉しくて。私は少し笑った後、「何でもないよ。」という意味を込めて小さく首を振った。
・・・・・・って、気付けば、普段よりも長く一緒にいて、幸せな時間を過ごせてる。これって、私の目的達成!じゃない?それなら、さっきの質問にどう答えられてもいいか。





「日吉。今日、何の日か知ってる?」

「・・・あぁ。クリスマス・イブだろう?」

「知ってたんだ。」

「当たり前だ。周りがこれほど盛り上がっていれば、忘れることもできないだろう。」

「それもそうか。」





予想通りとまではいかないけど、ほぼ想像していたような反応で、日吉らしいなぁ、なんてことを考えていたら・・・。さっきベンチに置かなかった鞄から、日吉が何かを取り出し、私に差し出した。





「だから・・・・・・これ。」

「・・・・・・え?」

「だから、お前に。・・・要らないのなら、返してもらうぞ。」

「いやいや!貰うから!!」





私は慌てて目の前のプレゼントを受け取った。・・・・・・って言うか・・・プレゼント?!!あまりに予想外すぎて、私はプレゼントを手に持ったままポカンと日吉を見ていた。





「一応、誕生日の時は祝ってもらったからな。その礼だ。それに、今日は部活も無いから、多少荷物が増えても邪魔にならないと思って、今日渡しただけだ。」

「・・・・・・開けていい?」

「駄目だ。帰ってからにしろ。」





今の日吉の言葉全てが、また日吉らしかった。まるで、今日を特別な日だと思ってるわけじゃないと言い訳しているみたい。さっき、イブの話をした後に「だから」って言いながら渡したくせに。そういうところが素直じゃない。でも、そういうところが愛おしい。





「ありがとう。おかげで、元気出た気がする。」

「・・・そうか。なら、そろそろ帰るか?」

「んー、もう少し休んでからでもいい?」

「わかった。無理はしなくていいからな?」

「ありがとう。」





本当は最初から元気だけど。でも、少しでも一緒にいたいと思うから、これぐらいの嘘は許してよね、日吉。
でも、早く帰りたいとも思う。だって、この中身が気になるもん・・・!!それに、私も買ってから、お返しを買いに行くか、作るかをしようと考えているし。明日が「Merry Christmas!」当日だし遅くはないもんね。・・・・・・そうだ。私も日吉から貰ったプレゼント、明日に見ようかな?いや、でも、やっぱり早く見たいな!まぁ、とにかく、お返しのことを先に考えなくちゃ。

・・・なんて、完全にクリスマスを楽しんじゃってる。私たちには直接関係の無いことかもしれないけど、こうやって楽しく過ごせるんなら、周りに便乗してみるのも悪くないかもね!
だから、日吉。できれば来年も、一緒に過ごそうね。









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や、やったー・・・!出来た〜・・・!!
というわけで、イブ夢で〜す☆(笑)かなり焦って書いたので、いつも以上に微妙さが増したかもしれませんが・・・;;とりあえず、季節に合った作品を書こうと頑張ってみました!
しかも、「Oblique Square」の続きにするつもりはなかったんですよね〜。ただ、書きやすかったので・・・。相変わらず、素直じゃない感じです(笑)。

・・・あ、そういえば。24日は既に冬休みだという学校もありますよね?・・・ということに、書いている途中で気付きました(汗)。この話じゃ、普通に登校しちゃってますよね・・・。すみません・・・orz
「今年の24日は水曜日。じゃあ、氷帝のテニス部は休みだー!これはネタにできる!!」しか考えてませんでした・・・。ま、氷帝は明日から冬休みってことで・・・(苦笑)。

('08/12/24)