あれからマジで毎日一緒に帰ったりしてっけど。はこれまでと変わらず接してくれるし、たまに遊びに行ったりもする。
人によっちゃあ、それを無神経だとか思う奴もいるかもしれない。けど、俺は嬉しかった。だって、距離を置かれでもしたら、寂しすぎるだろ?
そう思う俺は、まだまだ諦めていないってことなんだよな。・・・なんて、再確認しなくてもわかってる。俺はのことが好きだ。前よりずっと。
「健吾〜。」
「ん?どした?」
名前で呼ばれることも、すっかり慣れた。もそう呼ぶことに慣れたようだった。
「ほい、これ。」
「・・・・・・え?」
そして、いつも通り、部活に向かおうとした時、いつもとは違い、が何かを差し出した。
・・・袋?
「・・・・・・何だ、これ?」
「さぁ、何でしょう!」
満面の笑みで返した。・・・・・・嫌な予感しかしない。
「悪い、俺、急いでるから・・・。」
「ちょっと待った!役に立たないもんじゃないから。」
「・・・・・・な、何なんだよ・・・。」
「ふふ、さ〜て。何でしょうね・・・・・・?」
「・・・・・・やっぱ、俺、急いでるから・・・。」
「冗談、冗談!本当、変なものじゃないって!部活終わりか、間の休憩中にでも開けてみてよ。」
「お、おう・・・・・・。」
「それで、要らなかったら、あとで返してくれればいいから。」
「今、見たらダメなのか?」
「ダメ!絶対!」
「そんな、薬物みたいに・・・・・・。ま、まぁ、わかったよ。」
どこか、いつもと違う様子のから袋を受け取る。
なんか・・・照れてる?それに、この中身は・・・・・・。
いろいろと不思議に思いつつ、いつも別れるところまで来た。
「じゃあ、お互い部活頑張ろうー。」
「ああ。」
そして、が見えなくなったことを確認して・・・・・・。即行で袋を開ける。だって、気になるだろ。
中身を見て・・・・・・。
「・・・・・・弁当?」
そこには、やや小さめの弁当箱が入っていた。
・・・・・・もしかして、の手作り?放課後、俺の腹の足しになるように、ってわざわざ?
いや、まさか。そんなはずはねぇよな。
気になった俺は、弁当箱の中身も少し覗く。・・・・・・うん、手作りっぽい!
「なんで、俺に・・・・・・?」
頭に疑問符がいくつも浮かぶ。
これ、俺が食ってもいいのか?実は、これは用の物で、俺に間違って渡したとか?
もし俺に渡したのだとしても、なんで、そんなことを?
「うう〜ん・・・・・・。」
答えを出せぬまま、俺も部活へと向かった。
そして、間の休憩時間、少しの空腹を感じた。いつも通り、パンでも買いに・・・・・・と考えたところで、から貰った弁当に目が行く。
「・・・・・・そうか。」
そういえば、前に、部活の間に腹が減る、と話したことがあった。がそれを覚えていて、今日は余った物でも分けてやろうと思ったのかもしれない。
なるほど。それなら納得がいく。・・・・・・あ〜、でも、これで借りを作ったことになって、に何か頼まれたりでもしたら。
これまでの付き合いの中で、そういう時は結構無茶なことを言われてきたと恐怖しながらも、弁当を開ける。・・・・・・だって、の頼みなら、聞いてやりたいと思うし、の手作りなら絶対食べたいし!
「あら、沢松(驚)。それは愛妻弁当かしら?(羨)」
「あ、梅さん。いや、残念ながら違うっすねー。そうだといいんすけど。」
「へぇ〜、そう(楽)。」
「・・・・・・梅さん、人の話、聞いてます?」
始終ニヤニヤした様子で、梅さんはこっちを見ていた。・・・・・・って、俺が食ってるとこを撮らないでください!!
部活後、いつも通り、と待ち合わせ、帰る前にこの弁当を渡した。
「そういや、これ、ありがとな。」
「ありがと、ってことは、中見たの?」
「おお。そんで、美味しくいただいた。」
「へぇ〜、美味しく食べてくれたんだー?」
が嬉しそうな笑顔を浮かべる。・・・・・・あぁ、やっぱ、何か企んでたわけか。まぁ、いいけどよ。
「で、礼に何すればいいんだよ?」
「えっ?」
「だから、この弁当の礼。何か頼み事でもあるんじゃねぇの?」
「え、あ・・・・・・うん、そうよ!やっぱ、バレてたか!」
「何年の付き合いだと思ってんだよ。」
「察しがいいね、健吾!」
そんなことを言い合いつつ、どこかの反応に違和感を覚える。
「それで、頼みは?」
「あー、うん・・・・・・その。アレだ。・・・・・・今度の休み、遊びに行こう!」
うん、やっぱ、どっか変。まるで、俺に言われて、無理矢理頼み事を考えたかのような・・・・・・。
だって、遊びに、なんて、別にいつでも行けることだろ。
・・・・・・まぁ、いいか。無茶な頼みを言われるより、こっちの方が全然いいわけだし。
「わかった。場所は?」
「どこでもいいよ。・・・・・・カラオケとか?」
「了解。」
「やった!」
そう無邪気に喜ぶは、本当可愛い。ってか、前より可愛い気がする。・・・・・・あれ?なんか俺、に惚れすぎ?
ま、そんなこと今更だろ、とかなり恥ずかしげなことを考えつつ、俺は次の休みを楽しみにしていた。
いつもと同じような時間に、いつもと同じ場所で待ち合わせる。
約束した時にあらためて考える必要もなく、それで通じてしまう俺たち。付き合い長ぇもんなー。・・・・・・いや、付き合いって言っても、友達として、だけど。
とか考えて、嬉しいような切ないような気持ちを持て余していたら、がやって来た。
「ごめん、待たせた?」
「いや、今来たとこ。」
「そっか。よかった。」
・・・・・・このやり取りはデートっぽいんだけどな!!
でも、あくまで友達同士の遊び。恋人同士のデートではない。
そう言い聞かせても、やっぱり目の前のが可愛くて可愛くて仕方ない。
「、なんか最近、雰囲気違くね?」
「うぇっ?!ど、どこが?!」
「いや、なんつーか・・・・・・。私服とかも、前と違う感じがする。そういうの、詳しくねぇから、わかんねぇけど。」
「そ、そりゃー、私だって成長してますから!いつまでも同じ格好ではいられない、でしょ!」
「あー、そういうもんか?」
「そういうもんです!」
「でもまぁ、どっちにしろ、似合ってると思うぜ。」
「!!・・・・・・あ、ありがとう!健吾にそう言ってもらえると嬉しい。」
いつも通り、楽しそうな笑顔を浮かべる。・・・・・・でも、その言葉とのコンボはまずい。狙ってやってる・・・わけはないよな。
溢れそうな気持ちを理性でグッと抑え込んで、俺は歩き出す。
「よし!とにかく、カラオケ行くか!」
「おう!!」
も隣を歩き、ついて来た。
「場所はいつもの所でいいんだよな?」
「いいよー。他にオススメとかあんの?」
「俺は無いけど。が行きたい所とかあるかもしれねぇし。」
「私は健吾と行けるなら、どこだって楽しいから〜!」
「はいはい、アリガトーゴザイマース。」
「ちょ、ちょーい!私、本気ですよ?!」
「いや、あの言い方で本気はないだろ?」
「う、う・・・・・・。で、でも!思いは本気です!!」
「それはありがとよ。俺だって、お前と居んのは楽しいぜ。」
「うん、ありがとう!」
そりゃ、さっきみたいに切なく思ったりすることもあるけど。友達としても、一緒に居たい相手だし。
それと同じで、の言葉も嘘じゃないってことはわかる。
でも、それ以上の理由は無いんだろう?なんてことまで考え出すと、また切なくなる。・・・・・・から、今は考えない!
なんて決意した矢先に。
「げっ?!ま、またお前らか・・・・・・!」
「こんにちは、さん、沢松さん。」
「あ・・・・・・。」
「・・・・・・。」
またしても天国と凪ちゃんに遭遇してしまった。は俺の隣で黙り込んでいる。
あー、本当・・・・・・俺らの傷を抉らないでくれ・・・・・・。
「つーか、お前ら、やっぱデキてんだろ・・・・・・?!」
だから、空気読め、天国!!!!
前回と違い、俺も否定しようとした時、またしてもが先に口を開いた。
「バレちゃしょうがないわね。」
でも、その言葉は前回の俺のように、肯定の返事だった。
「な、何ー?!!!!」
「えぇっ?!」
「はぁ?!」
「って、なんでお前まで驚いてんだよ、沢松!」
「あ、いや・・・・・・。」
「ごめんね、健吾?やっぱり、いつまでも黙っておくのは、猿野くんに悪い気がして〜。」
「ちょ、何、その他人行儀な感じ?!」
「あら。そういう猿野くんだって、最近ちっとも私たちのこと構ってくれないじゃな〜い。だから、私たちの関係にも気づかなかったんでしょう?」
「私も気づきませんでした・・・・・・。すみません・・・・・・。」
「あー、鳥居さんはいいの!気にしないで?鳥居さんは、このバカを相手にしてるんだから、しょうがないって。」
「お前、バカって・・・・・・!!」
「あ、ごめん。真実は人を傷つけるものよね・・・・・・。」
「うわ!その言い方、すっげぇ腹立つ・・・・・・!!」
「親友たちのことを放ったらかしにする奴は、バカ以外の何者でもないと思うけど?」
「じゃ、じゃあ・・・・・・いつから付き合ってたんだよ、お前ら?」
「さぁ、いつからでしょうね?」
「な・・・っ!せっかく聞いてやってんのに!!」
「はいはい。とにかく、私たち、これからイチャイチャしたいので、邪魔しないでくれませんかー?」
「がうぜぇ・・・!!」
「同じようなこと、この間、天国も言ってたでしょうが!これで、私らの気持ちもわかりやがれ、このバカが!」
「あ、の・・・・・・。」
「あー、ごめんね、鳥居さん。本当、邪魔するつもりはないから。今度、二人で彼氏の愚痴でも話し合おうね!」
「・・・・・・ふふ。はい!」
「それじゃーね〜!」
すれ違い様、まだブツブツ文句を言っていた天国を一発殴ったは、意気揚々と歩いている。
後ろで、また凪ちゃんが、仲良いですね、と笑っている声がした。
その声が聞こえなくなるほど、二人と離れた所まで来て、がおずおずとこちらを見た。
「・・・・・・ごめん。」
「・・・・・・それは何に対する謝罪だよ?」
「その・・・勝手に、あんなこと言って。」
「別に。・・・・・・お前はいいのかよ。天国はともかく、凪ちゃんにも言っちまったら、もう否定はできねぇだろ。」
「うん・・・。ズルイ方法を取った。ごめん。」
何だよ、ズルイ方法って。
「意味がわかんねぇよ。」
「・・・・・・他の人に言っちゃえば、健吾も否定しにくいだろう、って。だから、ごめん。」
「答えになってない。」
そう言いながらも、頭の中にはある答えが浮かぶ。
「そ、の・・・・・・。健吾の気持ちが変わってない、とは思いたいけど、やっぱりちょっと怖かったから・・・・・・。」
無理にいつものような笑顔を浮かべようとしたの声は、今にも泣きそうに震えていた。
・・・・・・泣きたいのは、こっちだ。ただし。俺の場合は、嬉し泣きだけどな。
「変わるわけねぇだろ。何年の付き合いだと思ってんだ。それぐらい、わかれ。」
「・・・・・・健吾だって、私の気持ち、全然わかってくれてなかったくせにー・・・。」
「当たり前だろ。惚れた相手の気持ちなんざ、冷静に読み取れるか!」
「だったら、こっちだって同じだろうが!」
そんな風に言い合えば、涙は引いていった。その代わり、口元がニヤけそうになる。
「あー・・・・・・マジか?」
「おう、マジだ。」
そう言ったも、顔が赤い。照れてる・・・んだろうな。
ってことは本気なんだな。とか考える前に。今までの行動を思い返せば、そういうことだったのかと思い直した。
俺に弁当を作って来てくれたのも。服に気を配ったことも。総合して、何だか前以上に可愛く見えたのも。が俺を意識してくれていたから・・・・・・。
「あー!ダメだ!やっぱ、可愛い!!」
「ちょっ?!バカ!周りの人に聞かれたら、恥ずかしいでしょ?!」
「が可愛すぎるから悪い!」
「やめて!バカップルみたいに見られるから・・・・・・!!」
「んだよ。イチャイチャするんじゃなかったのかよー?」
「あ、あれは!言葉の綾、と言うか・・・!その場のノリ、と言うか・・・!!」
焦るが本当可愛い。テンションが上がりすぎる。
「悪かった。・・・・・・でも、本当嬉しすぎる。ありがとう、。大好きだ。」
「わ、私も・・・・・・大好きだよ、健吾。これからも一緒に居たい。」
「俺も、そう思ってる。・・・よし。つーわけで、あらためてカラオケ行くか!」
「・・・・・・おう!!」
普段通りに戻ったの手を繋げば、またしてもは照れ始める。
・・・・・・くそう。本当、可愛すぎる。いつの間に、そんなに俺のこと意識してくれるようになってたんだよ?!
きっと、そんなことを聞けば、恥ずかしがって答えてくれないに決まってる。それに、そんなことは大したことじゃない。・・・いや、教えてくれるんなら、聞きますけどね!
でも、何より。俺を選んでくれたことが嬉しい。俺を選んでくれたからには、俺が責任持って、お前のことを幸せにする。
そう決意して手に力を込めれば、もほんの少し強い力で握り返してくれた。
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久々、沢松夢!!前回のあとがきにて、「今度書くときは、ガラッと変えて、甘い話を目指します!」と書いていましたからね。実は、ちょこちょこ書いていたのですよ。
キャラ掴めてないけど、頑張りましたよ!(←)そして、楽しかったです!(笑)
だけど、実は、まだ書きたいことがあったり・・・(笑)。また気が向いたら、書いていこうと思いますっ!
・・・こう見えて、1番好きなキャラは虎鉄先輩なんですけどね!でも、虎鉄さんは、口調が独特過ぎて、なかなか書けない・・・orz(苦笑)
('12/09/24)