私たちの関係は、同じ部のマネージャーと部長。・・・・・・ただ、それだけ。それでも、他の人たちに比べれば、ある意味、特別だと思う。周りの女の子たちにも羨ましいと言われる。
自分でも、それはそうだと思う。だからこそ、この関係を壊したくない。自分の想いを告げて、友達以下の関係になってしまうのなら、このままの方がマシ。
だけど、好きだからこそ、このままじゃ嫌なんて思いもあったりする。
・・・・・・よく少女漫画なんかで、幼馴染に告白できない、って話があるけど。今、その気持ちが、わかりすぎるぐらいにわかる。



「はぁ・・・・・・。」



そんなことを考えながら、近いようで遠い、白石くんの背中を見つめる。



「なぁ、どないしたん?」

「っ!」



後ろから突然声をかけられ、慌てて振り返った。



「・・・・・・き、金ちゃん。」

「今、ため息、吐いとったやろ?何や、悩みでもあるんかー?」



金ちゃんは、とても心配そうな顔をして覗き込んでくる。
・・・・・・本当、金ちゃんは素直で、優しくて、いい後輩だ。たまに・・・・・・いや、結構、大変な時もあるけど。
でも、そんな金ちゃんに、何も無い、なんて嘘をつくのも心苦しい。だからって、本当のことは言えないし・・・・・・。



「う、うん・・・・・・。ちょっと、お腹空いたなーって。」

「そうなん?・・・・・・あー、でも、そんなん言うてたら、ワイもそんな気ぃしてきたー。」

「でも、もうすぐ部活も終わるから。もうちょっとの辛抱だね。」

「そやなー。・・・・・・あ、そや!どうせやったら、みんなでたこ焼き食べに行こー!」

「・・・・・・うん、そうだね!」



結局、嘘をついてることには変わりないか・・・・・・。ごめんね、金ちゃん。



「しーらーいーしー!!」

「!!」



金ちゃんは、嬉しそうに白石くんに向かって手を振っている。
って、なんで?!そ、そりゃ、みんなで行こう、って話だったし、白石くんに声をかけるのもわかるけど・・・・・・。でも、正直、私の心の準備が・・・・・・。
そんなことを考えている間に、白石くんがこっちに来てくれた。



「何や、金ちゃん。・・・・・・もしかして、、困らせてんのとちゃうやろうなー?」

「ちゃうわ!ワイの所為やないもんなー?」

「う、うん、そうだね。」

「ホンマかー?・・・・・・まあ、ええわ。で、どないかしたんか?」

「あんなー、部活終わったら、みんなでたこ焼き食べに行かへんー?ワイ、腹減ってきてんー・・・・・・。」

「あぁ、そないなことか。別にええで。」

「ホンマにー!?ほな、ワイ、みんなに声かけてくるわー!!」

「ちょお待ち、金ちゃん!まだ部活は終わってへんで!」

「わかっとる、わかっとるー!」



そう返しながらも、金ちゃんは元気よく走って行った。



「全く・・・・・・、あのゴンタクレは・・・・・・。すまんなぁ、。」

「え?あ、ううん!私がお腹空いたね、って言い出したことだから。」

「たしかに、もうすぐ部活も終わる頃やからなー。ちょうど、そういう時間帯やな。」

「だよね。・・・・・・それじゃ、また後で。」

「ああ。残りの時間も、頑張ろな。」

「うん!」



手を振りながら、さっきの場所へ戻っていく白石くんを見送る。
・・・・・・って、私、話を早く終わらせすぎたかな・・・・・・。
白石くんの背中を見つめ、またため息が出そうになる。
だ、だめ、だめ!せっかく、みんなでたこ焼きを食べに行くことになったんだから!その時に、白石くんとも話せばいいだけじゃない!

と決意してはいたけれど。
部活後、片づけを終え、最後に部室から出た私と白石くんを待っていたのは・・・・・・。



「すまんー。なんや、みんな、用があるって、先帰ってしもたー・・・・・・。」



頭を下げ、その前で両手を合わせて謝る金ちゃんだけだった。



「気にしないで、金ちゃん。みんなと行けないのは残念だけど、用事があったのなら仕方ないじゃない。それに、金ちゃんだって何も悪くないんだから。顔上げて?」

「ほな・・・・・・三人でも行ってくれるん?」

「うん、いいよ。」

「白石はー・・・・・・?」

「ええに決まってるやろ。」

「ホンマかー!?よっしゃー!!ほな、行くでー!!」

「あ、ちょっと・・・・・・!」

「・・・・・・・・・・・・って、行ってしもたな。」

「だね・・・・・・。」



金ちゃんは、途端にいつもの笑顔に戻って、駆けて行った。
・・・・・・つまり。い、今、私は・・・・・・白石くんと二人きりなのでは?!!
みんなと一緒なら、話しやすいと思ってたけど・・・・・・。二人だとやっぱり緊張しちゃう・・・・・・!
が、頑張れ、私!!



「そ、それにしても。あれだけ急いでる、ってことは、相当お腹減ってるのかなー、金ちゃん。」

「それもあるやろけど。ホンマ、いつも元気やからなー、金ちゃんは。」

「たしかに。・・・・・・元気すぎて、時々困っちゃうこともあるけど。」

「・・・・・・時々っちゅうか、しょっちゅうのような気もするけどな。」

「白石くんは、特にそうかもね。」

「まあ、あれが金ちゃんのええとこでもあるからな。抑えつけすぎてもアカンし・・・・・・難しいとこやわ――」



何とか、金ちゃんの話から、その後も会話を続けることができた。・・・・・・本当、ありがとね、金ちゃん!
そんな金ちゃんの後を追い、私たちも歩いていくと。たこ焼き屋さんの前で、しょんぼりとした様子の金ちゃんが見えた。



「――あれ?・・・・・・どうかしたのかな?」

「そやな・・・・・・。」



心配になり、急ぎ足で金ちゃんの元へ向かう。



「金ちゃん、どうしたの?」

「あ!!・・・・・・それが、ワイ、財布忘れてしもてん・・・・・・。」



私たちの姿を見て、すぐに嬉しそうな顔をした金ちゃんだったけど、また悲しそうにしている。
・・・・・・でも、よかった。大したことじゃなくて。



「大丈夫だよ、金ちゃん。それくらい・・・・・・。」



私が買うから、そう口にしようとした時。



「そうや。俺が奢ったるから、気にせんでええ。」



先に白石くんがそう言ってくれた。



「ホンマかー、白石ー!!」

「ああ。俺が買うて来るわ。・・・・・・も、ここで待っとって。」

「え?私も行くよ。」

「ええから。金ちゃん、頼むわ。相手しといたって。」

「そや、相手しとってー。」



二人とも、楽しそうに笑っている。
・・・・・・じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな。



「ありがとう、待ってるね。」



そう言って、白石くんを見送った。その後、金ちゃんと話をしながら、財布を出していた。・・・・・・だけど。



「ほら、金ちゃん。」

「おーきにー!!ほな、いただきまーす!!!」

「んで、。」

「ありがとう。いくらだった?」

「ん?何言うてんねん。俺が買うて来る、て言うたやろ?そやから、ここは奢りや奢り。」

「えっ!そ、そんな・・・・・・悪いよ。」

「悪いことあらへん。」

「そやでー!こういう時は、おーきに!って言うたらええねん!」

「金ちゃんは、ちょっとは反省してもええんとちゃうか・・・・・・?」

「わー、白石!毒手は勘弁・・・・・・!」

「・・・・・・ま、そういうわけや。ここは喜んで受け取っといて。俺も男やからな。」



白石くんは、笑顔でそう言い切った。・・・・・・どうやら、この考えを変える気は無いみたい。



「・・・・・・わかった。ありがとう!」

「・・・・・・おう。」



満面の笑みで答えると、白石くんも笑顔で返してくれた。・・・・・・でも、今、少し間があったような?




「っはぁー!美味かったー!」



そんなことを考えていると、金ちゃんが急に大きな声を出した。
え・・・・・・。



「金ちゃん、もう食べたの?!」

「だって、ワイ、めっちゃ腹減ってたんやもん・・・・・・。まだ食い足りひんぐらいやわー。早よ帰って、晩飯食べな!ほななー、二人とも〜。白石ー、ごっそーさーん!めーっちゃ、美味かったでー!」

「あ、ちょお待ち、金ちゃん・・・・・・!」

「ほな、また明日ー!」



金ちゃんは、白石くんの言葉も無視で、走り去っていった。・・・・・・も、もう、本当、いつも突然なんだから。
さっきだって・・・・・・って、また白石くんと二人きり!!



「・・・・・・い、行っちゃったね。」

「そやな・・・・・・。まあ、気にせず、食べよか。も焦らんでええからな。」

「あ、うん。ありがとう。」



その後、私は白石くんと二人でたこ焼きを食べ、そして白石くんに家まで送ってもらった。・・・・・・な、なんと贅沢な!!私、もう一生分の運を使い果たした気がする・・・・・・。
でも、これもそれも全部、金ちゃんのおかげなんだよね。ああ見えて、金ちゃんが気を遣ってくれてたり・・・・・・?いや、そんなはずはないよね!でも、ありがとう、金ちゃん。緊張はしたけど、おかげで楽しかったよ!









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おぉっと。気づけば、長くなっていた(汗)。
ということで、一旦終えておきます。自分の書きたいところは、最後の最後のところなので、まさかこんなに長くなるとは・・・、という思いです(笑)。

でも、こうして長くなるのは(計画性が無いだけかもしれませんが/苦笑)、関西弁キャラが二人もいるから、だろうな〜と思います。やっぱり二人の会話とかは書きやすいと言いますか、ノリで書いてしまうところがあるので、長くなってしまうんだと思います。
・・・って、ノリで書くから、やっぱり計画性が無いだけ、ですね(苦笑)。ごめんなさい;;

('12/05/30)